「な、何を……! そんな、交渉などが通じる相手では、」
「カノンさんのことも、私が直接話したほうが皆安心するはずです」
「それは、そうかもしれませんが……。い、いえ、ライゼ様が奴に会うなど冗談ではありません!」
「私だって、このフェルクレールトの民です!!」

 その叫びにも似たライゼちゃんの声に、ブライト君の身体がびくりと跳ねる。

「少しだけ皆と違う力を扱えると言うだけ……。それだけのために、こうして安全な場所で皆に守られ、何もせず、そうしてただ死んでいくのは嫌なんです!!」

(ライゼちゃん……)

 ライゼちゃんのその悲痛な言葉にブライト君はショックを受けたように目を伏せてしまった。

 ――彼女が、危険を顧みず遠い地まで私に会いにきた理由。そして今こうして必死になっている理由。
 すべてこの国の民を愛しているからだ。そして皆のために何かをしたいと思っているからだ。
 彼女は最初から言っていた。ただ護られているのが辛いと。

(その強い想いに惹かれて、私は今このフェルクレールトの地にいるんだ……!)

「カルダには、私が会いに行く」
「は!?」

 シンと静まり返る中突然声を上げた私に、皆の視線が一斉に集まった。

「だって、カルダが捜しているのは私だし。私が行けばカルダも気が済むと思うし。っていうか、そもそも私があいつに会っちゃったのがいけないんだし」

 またあの男に会うと思うと、足が震えるほどに怖いけれど、でもそれ以上に決心は固かった。
 私は自分を落ち着かせるように一度深呼吸して、まっすぐに皆を見た。

「私の世界でもね、少し前までこのフェルクとランフォルセみたいな関係の国が多かったの。でも今はそんな国殆どなくなってきてる。皆、そんなのおかしい、人間には皆人権があって、皆平等であるべきだって、わかってきているからなの。だからカルダもちゃんと話せば分かってくれるかもしれない」