ライゼちゃんの期待に応えることが出来た。
 年相応の可愛らしい笑顔が見られた。
 そのことがとても嬉しくて、そして心底ほっとしていた。

 ――あの時諦めなくて、本当に良かった。



 陽が沈み、ライゼちゃんは今夕飯を作ってくれている。
 私は「少し休んでいろ」というセリーンの言葉に甘えて寝室で横になっていた。
 瞼を閉じると子供達の楽しそうに歌う姿が浮かんだ。

(皆これから歌を好きになってくれたらいいな)

 歌が不吉とされるこの世界に、少しずつ歌が広まっていく。
 そんな未来を想像して、思わず顔が緩んだ。
 でも。

(ラグ、結局戻ってこなかったな)

 水浴びにしてはどう考えても長い時間。
 去っていくラグの背中を思い出しながら、私は寝返りを打ち目を開けた。

(ひょっとして歌、聴きたくなかった……?)

 昨日の夜も、彼は私の歌を聴きたがらなかった。
 子供達よりも長く生きている分、“歌”に対する偏見や嫌悪感がやはり根深いのだろうか。

 ……ヴィルトさんもセリーンも、ただ私たちの歌を聴いているだけだった。
 少し寂しいけれど、でもそれは仕方のないことなのかもしれない。
 人はなかなか自分の幼い頃からの考えを、変えられるものではないと思うから。

(ヴィルトさんが歌ったら、低音で素敵だろうなぁ……)

 そんなことを考えながら、私はいつの間にかうつらうつらと夢の中に入ってしまった。