「ですがライゼ様、子供たちの親にはどう説明すれば」
「私が呼んでいると。他の皆も順に呼ぶと伝えてください」
「承知いたしました。それでは、早速」

 私は小さく驚く。
 今の会話だけでも、ライゼちゃんがこの国にとってどれだけ大きな存在なのかわかった気がした。

「ブライト」
「は」

 一度背を向けたブライト君にライゼちゃんが声をかける。
 と、再び振り返った彼は、明らかに動揺した素振りを見せた。
 ライゼちゃんが目を細め、優しく微笑んでいた。

「あなたにも、カノンさんの歌を聴いてもらいます。そうすればきっと、私がカノンさんをここへお連れした意味がわかると思うから」
「は、はい! そ、それでは、失礼いたします!」

 ブライト君は赤く染まった顔を隠すように深く頭を下げると、その場から早足に去っていった。
 それを見送りながら、私は顔が緩んでいくのを止められなかった。

(思った通り!)

 ブライト君はやはりライゼちゃんに想いを寄せているみたいだ。

(あんな可愛い笑顔を向けられて、私だってきっと男だったら間違いなく惚れるもんね!)

 しかし昨夜泉でのライゼちゃんの反応からして、完全に彼の片思いのよう。
 ライゼちゃんは彼の気持ちに全く気が付いていないようだった。
 それをブライト君はおそらくわかっている。
 立場上、婚約者のことも知らないはずがない。
 そう考えると、彼の想いはとても切ない……。

(応援してあげたいな)

 完全に部外者な私がそんなことを思うのは、お節介以外の何物でもないけれど、まだ会ったことのない婚約者より断然ブライト君を応援してあげたいと思った。

(がんばれブライト君!)

「おい百面相、すぐに歌えるんだろうな」
「へ!?」