真剣なその眼差しに顔の熱が上がる。
 ライゼちゃんにも同じようなことを言われたけれど、また違う。
 なんて答えて良いのかわからない。
 ……とにかく、全身が熱かった。
 だが、横からの舌打ちに私はびくりと肩をすくめる。

「どいつもこいつも……っ! こいつに何が出来るってんだ!? アホらしい! そんなことで変わる世界なら、とっくに変わってる!」

 憎々しげな怒鳴り声。

(ラグ……?)

 慣れてきたと思っていたのに、私は久し振りに彼を、――ラグを、“怖い”と思った。
 エルネストさんがふぅと溜息を吐く。

「ラグ、カノンが怯えているよ」
「!」

 瞬間、ラグと目が合った。
 でも彼はすぐにその視線を外すと、もう一度小さく舌打ちをした。

「っと、そろそろ時間だ。僕は消えるよ。……カノン、頑張ってね」
「は、はい!」

 なんとか、返事をすることだけは出来た。
 彼はそんな私ににっこり微笑んで、いつものようにスーっと消えていってしまった。

 ――そしてまた、ラグと二人きり。
 しかも、なんだかとても気まずい雰囲気だ。

「あ、ありがとう、ラグ。術のコツ教えてくれて。もう、戻ろっか!」

 私が精一杯明るく言うと、彼はさっさと背を向け歩き出してしまった。
 ……こちらを見てもくれない。