「万物の力を感じろ。信じろ。そして、感謝しろ。……オレが昔、お前と同じように上手く力を扱えなかった頃、言われた言葉だ」

(感じろ。信じろ。そして、感謝しろ)

 私はその言葉を心の中で反芻する。

「まぁ、セイレーンは自分の力を歌にするっていうからな、少し違うかもしれねぇが」
「うーん、じゃあ私の場合、自分の力を感じて、信じて、感謝しろってこと?」

 ……いまいち、ぴんと来ない。
 まだ、万物の力を感じろ、という方が分かる気がした。
 ラグも困ってしまったように頭を掻いている。

「歌のことなんざこっちはさっぱりだからな……。つーかお前の世界じゃ、歌はどんなもんなんだ? 何のために使う?」

 唐突にそう訊かれて戸惑う。どう説明したらいいだろうか。

「やっぱ誰かに教えてもらうんだろ?」
「えっと、うん、教えてもらったりもするけど……。なんだろ、私の世界じゃ、色んな場所で歌が流れててね、」

 今度はこちらが先生になったような気分で、言葉を選びながら続ける。

「皆で歌って楽しく盛り上がったり……あと、落ち込んだときに聴くと元気が出たりするかな。あ、私の世界じゃ「使う」って言い方はしないよ! こっちの世界みたいに歌ったからって魔法みたいな不思議なことが起こるわけじゃないし」
「マホウ?」
「あ、えっと、術のこと」

 果たして今の説明で理解してもらえただろうか。
 私は案の定難しい顔をしているラグを見上げる。

「ふーん。いまいち良くわからねぇが、元気が出たりするんだろ?」
「うん?」
「それは、術と同じようなもんなんじゃねーのか?」