(うわっ……!)

 途端、その一度の羽ばたきだけで総勢6人と1匹を乗せた重そうな身体がふわりと地面から浮き上がった。
 二度目の羽ばたきで、ぐんっと後ろに引っ張られる感覚と共に強い風が全身を襲った。
 気圧の急激な変化に鼓膜が悲鳴を上げる。
 でも次に目を開けた瞬間眼前に広がったのは、満天の星空と白く大きな月に照らされキラキラと輝く大海!

「うっわあ~!!」

 その神秘的な美しさに思わず感嘆の声が漏れていた。
 先ほどの強い風も、今はまるで自分がその風になってしまったかのように心地よく全身を撫ぜていく。

「ねー! 気持ちいいでしょー!?」

 前方からラウト君の大きな声。

「うん、気持ちいー!」
「はしゃぎ過ぎて落ちるなよ」

 そんなラグの呆れたような声も、風と共に私の横を通り過ぎていく。
 眼下にはルバートの港を確認することができた。大きな船が何隻も泊まっている。

(本当ならあの船に乗って行くつもりだったのに……)

 まさかこんなふうにドラゴンさながらのモンスターに乗って空を飛ぶなんて思いもしなかった。
 薄い雲を追い越し、月に向かって行くようにグングン上昇していくビアンカ。
 流石に肌寒くなってきた頃、体制を整えるようにビアンカはその翼を一度大きく羽ばたかせた。

「もう手は放しても大丈夫ですよ。あとはまっすぐ進むだけですから」

 そんなライゼちゃんの声を聞きながら、私はおっかなびっくり足元を見下ろす。
 そしてその吸い込まれそうな闇に、ぎゅっとビアンカの鱗を掴み直した。