じゃあ、仁瀬くんは。
 最初から、そこまで悪い人じゃなかったと。

「図書館の本。捨てたって」
「それもどうなんだろうね? そういえば花が怒ったり困ったり。衝撃受けたりすると思って言った可能性あるよ」
「なっ……」
「顔がいいと。そういう愛され方もキュンキュンしちゃうね〜?」
「と、いうことだ」
 …………どういうこと!?

「ちょっと前に、レイジが花を泣かせたって噂あったじゃん?」
「あったな」
「レイジに泣かされた花を。優しく抱きしめる仁瀬くん想像すると。たまんない。正直めちゃくちゃ見たかった。悶えるわ」
「いやー。あれは命がいくつあっても足りないと思った瞬間だった」

 ちょっと二人がなにを言っているかわからない。

「気づいてたんだね」

 二人は、いろんなことが見えていたんだ。

「花が、誰を見てるかも。仁瀬が花をどう思ってるかも。そのときは、なんとなくだったけどな。今となれば。色々と納得いく」