すると、真剣に話を聞いてくれていた沙羅がニマッと笑った。

「だと思った」
「え?」
「話だけ聞いてると。正直、不安になる。ちゃんと仁瀬くんは花を大切にしてくれるか。また泣かされたりしないか。傷つけられないかって」
「……うん」
「でも。今日、うちの知る限りで。いちばんハッピーそうな花が見れて。ホッとしてる!」
「沙羅っ……ごめん」
「なに謝ってんのよ〜」
「嘘、ついてきて。沙羅の好きな人、好きになって」
「あー、そんなこと?」
「そんなことって……」

 あまりに沙羅があっさりしていて。
 気を使っているというよりは、本心のようで。

 困惑していると、玲二くんの口から思わぬ言葉が出た。

「沙羅、仁瀬のこと恋愛対象外だろ」
「うん」
 …………!?
「えっ、でも。キスとかしたいって」
「そりゃあ。なんたって、顔がいいもん」
「!?」
「でも。ラブじゃないよ?」
「えーっ!?」

「俺が思うに。沙羅のそんな気持ちに気づいた上で。仁瀬は花を脅す材料に沙羅のこと使ってそうだよな」
「だよねー。ある意味悪質だよね」
「つーか。ドSだな」
「うんうん。やってることは、ただただ、花のこと溺愛してるんだけど。悪人ヅラして泣かせて悦ぶとか。秀逸すぎる。さすが天才」
「もはやヘンタイだろ」
「学園祭も。本気で壊す気なかったと思うよ」

 そうなの……?

「それを間に受けて言いなりになる花が。かわいそうだけど。可愛すぎる」
「そんなっ……」
「沙羅は、仁瀬の吐く息になりたいとか言いながらも。中身は仁瀬寄りの人間だからな」
「さすがレイジ、よくわかってる〜」