巧くんが、目を見開いて、わたしを見つめる。

「……僕が。可哀想になった?」
「ちがう」
「花のこと。泣かせた。君は、それが嫌だと言った」
「いいよ。全部、許す」
「死にかけの僕に冷たくするのは気が引ける?」
「死にかけてない」
「!」
「ごめんなさい」
「……なんで花が謝るの?」
「壊れてるとか言って。ごめん」
「そのとおりだと思うよ。僕は、昔から人と違った。みんなが喜ぶことで、喜べなかった。みんなが悲しんでいるとき、笑っていた。出来がいいと言われてきたけど。心は、欠陥品なんだ」
「巧くんは壊れてなんかない」
「いいや、壊れてる」
「それが巧くんだっていうなら。まるごと受け入れるから」

 ――心からの言葉だった。

「友達と離れろっていうなら。離れる」
「……あんなの本気にしたの? あれは。君を泣かせるために言ったことだ。真に受けなくていい」
「いちばん大切な人だって、思うよ。巧くんのこと」
「……やめろ」
「どうして」
「そんなこと言って。……花の、気が変わったら?」

 強がりな巧くんが消えていく。

「僕は花しかいない。花は、違う。他人と喜びを分かち合える人間だった。似ていると思ったのに」
「合わせたい、歯車」
「……!」
「巧くん。わたしを一人にしないで」

 絶対に失いたくないと思う。

「わたしはね、巧くんと。巧くんと――」