急に目を閉じた巧くんが、ぐったりと横たわる。

「巧くん……!」
「平気」
「あっつ……熱、高いよ」

 おでこに手をあてると、測らなくても高熱だということが伝わってきた。

 息遣いが、荒い。
 額はタオルで拭ったばかりなのに、汗の量が尋常ではない。

「苦しいの? タクシー呼ぼうか。病院行こう」
「いかない」
「なんで?」
「……と」
「なに?」
「花と、二人でいたい」
 …………!
「このまま。死んでもいいから」

 どうしてそんなことを言うの。

「死んでもいいなんて言わないで」
「僕が死んだら困る?」
「当たり前でしょ!?」
「そうか。花は、僕のことが必要なんだ」

 体調って、こんなに急変するものなの?

「やっぱり、念の為に病院に――」
「命は軽いよ、花」

 …………え?
「結局、みんな自分のために、命は大切だ、なんて言うんだ。ただの、おしつけ。本当に重いなら。どうして僕の命は、空っぽなんだろう」
「ねえ、薬は? ないの? 解熱剤とか」
「消えて、なくなってしまえばいい。最期にワガママを、ひとつ、叶えてもらえるなら。心臓がとまるまで。花に傍にいてもらいたい」