仁瀬くんは壊れてる

 偏見かもしれないけど、男の子が裁縫ってなかなかイメージわかない。
 それも玲二くんなら、尚更。

 もちろん好感度は上がりまくりで。
 玲二くんの新たな魅力を知れたことが嬉しい。

「年の離れた妹がいてさ。ゼッケン縫い付けるのから小学校入学の準備まで俺がやってやった」
「入学準備?」
「給食セットや歯磨きセット。体操服入れに手提げバッグ」
「すごい」
「すごかねえよ。なんでも好きなキャラのは売ってないとかで。布買ってそこから作らされた」

 いいお兄ちゃんだな、玲二くん。

「芳田、家でもパシらされてんの? ウケる」
「家でもってなんだよ」
「だって芳田は、中学のときから沙羅のパシりじゃん」

 そうか。
 この子たち、沙羅と玲二くんと同中なんだ。

「誰がパシりだ。ただの腐れ縁だ」
「てっきり芳田は沙羅のことが好きだと思ってたんだけどね〜」
「は?」
「芳田にも。ついに春が来たか」

 そういって、女の子たちの視線がわたしを向く。

「花、芳田はいい男だよ」
「そうそう。意外に」

 意外にもなにも。
 玲二くんは、男前だ。

「なに言ってんだか」
 そっけなく玲二くんが答えると、視線を教室前方の掛け時計に向ける。

「もう時間ねーな」
「そうだね、ごみ捨てして終わりにしようか」

 玲二くんに気を取られていたわたしは、気づいていなかった。

「なら。僕が捨てて帰るよ」
「いやいや。仁瀬くんにゴミ袋は似合わないです」
「花」

 このとき、王子様が静かに苛立っていたことに。

「捨てに行こ」
「え……。わたしは――」
「ついでに捨てていこうよ。一緒に帰るんだから」