仁瀬くんは壊れてる

「今日はもう帰ろうかなと思ってたんだけど。玲二くん来てくれたからまだ頑張れそう」
「なんだそれ。力仕事か?」
「んーん」
「……じゃあなに」
「元気出てきた」

 やっぱり友達って、いいな。
 励まし合ったり。
 なにかに向かって一緒に頑張ったり。

「……そういうの」
「?」

 玲二くんがピタリと足を止める。
 教室は、すぐそこなのに。

 中から女の子の嬉しげな話し声が聞こえてくる。
 王子様とそのトリコの声だろう。

「期待する」
「玲二くん……?」
「もっと花のこと元気にさせたいって思う」
 …………!
「花は。花は、笑顔がかわいーな」

 玲二くんは、

「もっと笑ってろよ。そのほうが、俺も。……沙羅も嬉しい」
「……うん」

 わたしの欲しい言葉を、くれる。

 だから。
 思わず頬が、緩んでしまうんだ。

「ところで。今誰が残ってんの」
「え……と。女の子、二人と」
「二人と?」
「…………」
「花?」

 どうして言葉に詰まってしまうのだろう。

 玲二くんの前で。
 仁瀬くんの話、したくないんだろう。

「まあ、いーわ。行けばわかる」

 玲二くんが、歩き始める。

 離れたくないと、思った。

「……待って」
「ん?」

 玲二くんの隣につく。

 玲二くんから離れないようにしなければ、沈んでしまいそうな気がしたんだ。