「あんまり意識したことないけど。美意識の高い子は、魅力的だと思うかな」

 ――――わたしと真逆の女の子。

「早起きして髪、巻いてきたり。トリートメントしてたり。そういう努力って、男にはない部分だからさ。素敵だよね」
「トリートメントします!!」
「はは」

 わたしに、可愛いって言ったクセに。
 どこにもいないって。

「それじゃあ沙羅なんてどうです?」
 …………!!
「友達といわずに。もっと仲よくしてあげてくださいよ〜」

 やめて。

「もっと仲良くって?」
「そりゃあ……ねぇ?」
「うちのクラスでも。仁瀬くんに初めてを捧げたいって女の子、多いんですよ」

 その男に沙羅を近づけようとしないで。

「ふうん。それって。どんな初めて?」
「わかって聞いてますよねー?」
「わかってるよ」
「そういうところズルい……!」

 あんなに居心地がよかった空間が。
 息がつまるだけの場所になった。

「なんで僕なの。周りに男、たくさんいるよね」
「そりゃあ、カッコいいし。上手そうだし」
「大切にしなよ。初めては一回きりなんだから」

 ――いっかいきりなんだから

「そんな紳士みたいなこと言って。女の子、泣かせちゃってるんじゃないですか?」
「否定はしない」
「罪深いー!!」
「泣かされたい!」

「……っ」
 いても立ってもいられなくなって。

「花、どうしたの?」
「トイレ」

 立ち上がり、教室を出た。