「なんで……そんなこと言うの」
「君がカラダ張って守るほどの価値なんてないだろ」

 どうして、そんな風に言うの。

「そうだ。一緒に壊そうよ」

 ――――!!

「いや、違うな。君が壊せ」
「わたしが……?」
「うん。それが面白い。花が。花の手で、壊すんだ。そこのポスター、破ってみて」
「そんなこと。できない」
「じゃあ、衣装。捨ててきて」
「できない。したくない。絶対に、いやだ」
「僕に歯向かうの?」
「…………」
「いいよ、できないなら。やらなくて」

 機嫌を損ねるどころか微笑みかけてくる仁瀬くん。
 とても嫌な予感がする。

「だったら、花の一番大切なものを壊そう」

 …………わたしのいちばん大切なもの?

「沙羅を」
 ――――!!
「天国から地獄に突き落とす」

 それは、もっとも恐れていたことだった。

「簡単だよね。あの子は僕に惚れてるから。夢みさせるのも、落とすのも」
「それだけは、やめて」
「それだけは? つまり。他のことは、なんでもするの?」
「……っ」

 どうして。
 どうして、そんなに酷いことばかり言うの。

「ああ。花」
 …………悪魔。
「やっと、泣いてくれた」