仁瀬くんは壊れてる

 本当に、なにも企んでいないの?
 純粋に学園祭が盛り上がるといいなって思いで協力してくれているの?

 だったらわたし、失礼なこと言ってる。
 いくら嫌な目に合わされたからって。

 この場で仁瀬くんにあからさまな敵対心を向けるのは、輪を乱すことになる――
「……なんて」

 今しがた穏やかに笑っていた王子様が。
 目を細め、口角をあげ、不敵に笑う。

「思ったとおり、単純なヤツらだ。飼い慣らすのになんの手間もかからなかった。金は結構使ってやったけど、いいよ。投資しただけ愉しめそうだから」
 …………!!
「しかし、なんだろうね。この空気感。僕が大嫌いなやつ。無駄だらけ」

 やっぱり。
 仁瀬くんは、学園祭を純粋に楽しむために参加しているわけじゃなかった。

 少しでも、優しさで協力してくれてるかもって考えたわたしが、バカだった。

「花はこの学園祭、成功させたい?」
「当たり前のこと聞かないで」

 クラスメイトの色んな想いとか努力が。
 ここには、たくさん詰まっているんだって知れた。

 参加しなければ気づけなかったことだ。
 仮に参加していても、嫌々やっていたら、見逃していたかもしれない。

「なんでそんなにやる気になってるの」
「いけない?」
「……違うでしょ」

 大きな声をだしていないのに。
 静かに、ひとこと囁いただけの言葉に迫力がある。

 怒鳴りつけられる方がまだ怖くない。

 ちがう?
 なにが、ちがう……?

「花は、なんにも関心がなくて。クソほどに退屈な人生を送っていて。こんな暑苦しいイベント。真っ先に抜け出す側の人間なんじゃないの?」