数日後の、放課後。

 衣装を作る班や、看板を塗る班、ポスターやチラシを描く班などに別れて作業を進める。

 これが意外に大変なんだ。
 限られた予算(今回は仁瀬くんの力を大いに借りたが)で、限られた人数で、限られた時間で本番までに必要なものをすべて揃える。

 前日には飾り付けなど仕上げに苦労するのが今から目に見えている。

 それでも、みんな楽しそうだ。
 高校生活初めての学園祭。
 たいていの子は、中学時代より規模が大きくなったとかで。

 他校の友達や恋人を招待すると、今からウキウキしている。

 そんな空気が。
 少し、居心地がいいと思い始めていた。


「そろそろ部活行ってくる」

 みんなから受け取った領収書をまとめていると、玲二が声をかけてきた。
 わたしは事務的な仕事をメインにやっている。

「抜けてわりいな」
「心配いらないよ。きっと、この調子なら間に合う。わたし、まだまだ残れるし」
「……変わったな、花」

 自分でもそう思う。
 これまでの人生で、今、いちばん働いている気がする。

 頭もカラダも。

 わたしの“動く”なんて、せいぜいナマケモノが意外とナマケていないくらいのものだろう。

 仁瀬くんのような影響力もなければ。
 沙羅みたいにリーダーシップもとれないし。
 玲二がしてた肉体労働は、向いてない。

 それでも。
 できることから、始めたい。

 クラスのため、というよりは。
 まずは自分が変わるために行動しているのかもしれない。

 生きてて楽しいの、なんて。
 もう言わせないよ。

「今日、一緒に帰らねえ?」

 玲二が髪をかきあげながら尋ねてくる。

 いつも部活の仲間と帰ってるだろうに。
 珍しいな、と思いながらも
「わたし、下校時刻ギリギリまで教室でできることしてると思う」
「じゃあ俺がここに来るわ」
「わかった」

 玲二と帰る約束を、自然と交わした。