仁瀬くんは壊れてる

「なにそれー!」
「え?」
「花。レイジもらってあげてよ〜」
 …………!?

「アホか」
 沙羅に軽くチョップする芳田くん。

「もうすぐ夏休みだし」
「夏休み関係ねえだろ」
「夏といえば」
「合宿。早寝早起き」
「ちがーう!!」
「うっせ」
「花火! 夏祭り! 海!」

 二人の会話はコントみたいで面白い。

「あっ、そういや花。誕生日もうすぐだったよね」
「そーなのか?」
「うん、来月。……といっても。下旬だからすぐでもないかな?」
「空けといてよ、レイジ」
「部活なければヨユウ」
「あっても休め!」

 そんな無茶な。

「うち、花にビキニあげるから」
「なんとかするか」

 いやいや、練習出て。
 ビキニ着ないから。

「何日」

 ボソッと芳田くんに問いかけられる。

「27日」
「オッケー」

 なんのオッケーだろう。
 ほんとにわたしの誕生日に海に行くの?

「……芳田くんも。ビキニ見たいひと?」

 わたしの問いかけに沙羅が噴き出す。

「見たくない理由がわかんねーな」
「男子高校生舐めちゃダメだよ、花。レイジの頭の中は。もはや花のビキニ姿でいっぱいだから。今夜はそれを想像しながら――」
「とりあえず消えてくれ」
「うちのおかげで花のビキニ拝めるんだから感謝しなさいよ」

 だから着ないってば。