仁瀬くんは壊れてる

 沙羅のお姉さんの家は、一戸建て庭付きで――
「ごめんねー? 散らかってて」
「いえ。突然お邪魔してすみません……!」

 なんとなく肝っ玉お母さん的な人を想像していたのだけれど、キャリアウーマンみたいな雰囲気の女性が出迎えてくれた。

「お姉ちゃん、トイレ借りるよ」

 すぐさまトイレに向かう、沙羅。

「こ、心の。準備……が」
「なにいってるの。赤ちゃんは待ってくれないよ」
「!」
「こうしている間にも。どんどん大きくなってくんだ。いるなら。はやく、存在に気づいてあげたくならない?」
「……気づいてあげたい」
「使い方は理解してる?」
「うん」

 さっき、電車の中で。
 携帯で調べて、予習した。

「よっしゃ。行ってこい!」

 トイレのドアを、開いたとき。

「花」

 沙羅に呼ばれて振り返る。

「ここで待ってる」
「……うん」

 中に入り、鍵を閉めた。