って、待てよ。

「俺は……」
「やっぱりいいや」
「は?」
「こんなの省エネじゃない」

 調査なんて始めてどうする、わたし。

「小糸井さんって。謎」
「それ、沙羅にも言われた」
「楠田以外と話してるとこ見たことないし」
「芳田くんと話すじゃん」
「仕事のときだけな」
「まあ、それもそうか」
「つまり。話せることは話せるんだな」
 …………?
「小糸井さん」
「んー?」

 手に取った本のカバーが破れていることに気づき、傍の台車に置く。
 問題のある本は補修するという流れだ。
 まったく。
 昼休みの貸出当番だけでなくこんなことまでやると知っていれば別の委員を選んだのに、なかなかハードである。

「俺、小糸井さんが気になる」

 ――え?

「……なんか言ってくれよ」
「わたしが気になるの?」
「うん」
「なんで」
「未知だから、かな」
「あー。人と違う自覚はある。けど、知ってもおもしろくもないよ」
「面白いかどうかは俺が判断することだと思うけど」
「たしかに」

 だからって、やっぱりおもしろい自己紹介なんてできないわけで。

「省エネじゃない、って?」
「意欲がわかないんだよね。色々と」
「動きたくないってこと?」
「そうそう。お金も使わないし。余計なこと考えたくない。感情だって、浮き沈みさせたくない」
「やっぱ未知だな」
「こんなんだからさ。人と楽しみを共有できないの。趣味はないし。友達も少ない」
「楠田とは仲いいけど」
「沙羅は、好奇心の塊だから」