大嫌い、だから恋人になる

「失礼な。私のお弁当、美味しかったでしょ?」

「なあ、お前、作ってる時、味見とかちゃんとしたか?」

「味見?ううん、してない。でも美味しいから大丈夫だよ」

「味見しないで何でわかる?」

「美味しいから」

秋山君はまたお腹を押さえた。それから保健室で貰った正露丸を飲んだ。

「よくそんな苦いの飲めるね」

「お前の弁当に比べたら、正露丸の方がましだよ」

「彼女の作ったお弁当だよ。ちゃんと褒めて」

「なあ、ちょっと聞かせてくれ。ハンバーグにかかってたソースみたいの何?ケチャップじゃなかったけど」

「ああ、あれは自信作なの。イチゴのソース。新鮮なイチゴで作ったの。ケチャップが無かったから。色合いがちょうど良いかなって」

「じゃあ、焼き鮭の味付けは?」

「あれはお砂糖。ちょっと塩気が強かったから、砂糖でバランスを取ったの」

「生姜焼きは何?」

「生姜が無かったから、辛子とワサビ。生姜の分、いっぱい入れといたよ。サービス」

「スパゲッティは?凄い味がしたけど」

「ふふ、あれは自慢の一品。冷製パスタ。冷製だからちゃんと凍らせといた。食べる頃には氷も解けて、冷たかったでしょ?」

「氷が解けて水でべちょべちょになるって考えなかった?」

「大丈夫、その分、ご飯かちかちにしといたから、水を吸って柔らかくなったでしょ」

それを聞くと秋山君は久しぶりに、バカって怒鳴った。

完璧な調理と工夫なのに。