大嫌い、だから恋人になる

「何、泣いてるんだ?」

突然言われてびっくりした。

目を開けると秋山君が居る。一瞬、幻かと思った。でも間違いなくそこに居る。

秋山君はじっと私を見てる、それから私の顔を触ろうとする。
こういうシーン、見たことある。女の子が泣いていると、男子がそっと涙を拭ってくれる。それで女の子を笑顔にするようなこと言うんだ。

ダメ、今そういうのはずるい。心の準備だって出来てない。心臓はドキドキしすぎて痛い位。秋山君が私を好きにさせるようなことは絶対にダメなのに、これじゃあ、逆になる。 

窓から夕暮れが差してて、それが丁度秋山君の顔を照らしてる。少し橙色に輝いて、息を呑みそうになる位に格好いい。ダメ、こんなのは絶対に。でも待ってる私も居て、秋山君から目を離せない。

「お前の泣き顔・・・」

と秋山君は言った。とうとう来た。笑顔の方が似合うとか、もう泣くのは止めろ涙は似合わない、とか、そんな言葉を今言われたら私・・・

「なんか赤ちゃんチンパンジーに似てるな」

あれ?チンパンジー?私の涙はぴったり止まった。

「ええと、チンパンジーって言った?」

「言ってない」

そうだよね。泣いてる女の子にチンパンジーなんて。

「チンパンジーの赤ちゃんって言った」

「待って、幾ら何でもチンパンジーは無いでしょ?」

私は慌てて言う。

「でも可愛いんだぜ。チンパンジーの赤ちゃん。見たことある?」

「無いよ。でも私は女の子だよ」

「だから誰もチンパンジーの男の子だって言ってないだろ。チンパンジーの女の子の赤ちゃんだよ」

「そっか、じゃあ・・・って全然良くない」

「そう?」

「そうだよ」

「まあ、でも良いや」

「良くないって」

「良いんだよ。これで」

秋山君はそう言ったかと思うと、私の涙を指で拭った。

「もう涙は止まっただろ?」