「良いですね、ロードバイク。」

風でなびいた彼女の髪が、俺の顔を撫でる。

「ああ、季節的にね。もう少ししたら厳しいけどね。」

真夏は…厳しい。

「今日、誘ってくれて…ありがとうございます。」

彼女がそう言ってくれ、心が浮き立つ。

「ロードバイクは初めて?」

「はい、こんな風に二人で漕ぐのも。」

……【聞きたいから、聞く。それは、興味やろ。】

……【お前も聞いたらええ。彼女に。それは、興味があるというアピールにもなる】

彼女へ、1つ質問したことで

SS0の言葉を思い出していた。

それに、俺も気になったから。

「川辺のキスは?」

「は、初めてですけど…」

「じゃあ、海辺のキスは?」

「し、したこと、ありませんけど。」

俺が初めてであること、それに…

胸がこそばくなるような、何とも言えない気持ちになった。

嬉しい。そんな感情だった。

だから…

そこで止めておけば良かった。

それなのに、それ以上聞いてしまったのだ。