土曜日になって田中さんから連絡があった。



「明日なんだけど、希望はある?」



「…あ、えっと…ロードバイクがいいです」



「分かった、明日は2台にしようか」



「…はい、なぜ…?」



「顔が見たいから」



ぶわっ。

明日は特殊メイクで行きたいくらいだ。



「…あの、お話したいことも…あって…」

こう言っておけば、必ず…

言わなければならない。

敢えて自分の為にそう言った。



「分かった。夕食はうちでと思っているんだけど、かまわない?」



「ええ、はい」



「着替え、持ってきて」



…着替え?



「は?い?」



「着替え。あ、こっちで俺の服着てくれてもいいけど…」



「いえ、は、持参イタシマス」



「じゃあ、明日…少し気温も低くなってきたし2時に、以前と同じ場所で」



着替え?

それって、それって…

おと、おと、おと、おと



【お泊まりでしょうか】



「…いや、ロードバイクで汗をかくからじゃないかな?」

そうだ、そうだ、きっとそうだ。



【明日は肌寒いくらいの気温です。羽織が必要】



「ゼロちゃーん!」



【全身脱毛コース、予約しますか?】



「間に合うかー!」



【シェービングAIの派遣を依頼しますか?】



「…大丈夫です。パックでもして寝よう」



【間に合いますか?】



「うるさい!気持ちの問題だ!」



【“実雅さんが好きです”】

私の声でゼロが言った。



…絶対にバカにして…



【言わなきゃ、ゼロもストを起こしますよ】



「はいはい、お休み!」



【ブィッシュィーン】



ゼロのスト!?

何する気だろ!?



いや、そんな事より……



考えただけで脈拍が……



【ブィッシュィーン異常事態ですか!?心拍数の上昇……ああ、ブィッシュィーン】





何か腹立つ。



好き好き好き好き好き



よし!言うぞ。明日の為に早く寝ることにした。