そうだった。

…前回、彼がなぜロードバイクを選んだか。

それは“怒らせたくなかった”からだ

『笑ってくれたらいいなって。いつも、怒らせるから。』

そう言った彼を思い出す。

「ずっと…自分の事ばかりだったかなって…考えたら分からなくなったんだ。そしたら、連絡も出来なくなってしまって…」

「…私も、ごめんなさい」

「…えっと、品川さんに…興味があるんだったら…」

「……いや、品川さんに興味はないです。ただ、あなたといたのが…嫌だった」

「…そうか…なら、今度から他の女性と要るときは説明したらいい?それとも、事前に報告する?…他の女性とは接しない方がいい?…どうすればいい?」

……微っ妙ーに、ズレてるな。

他の女性に近寄らないとか、何かと自意識過剰になるだろうし、いや、彼くらいのイケメンだとそうもならないのか…

「…大丈夫。ただ…手は繋がないで。私以外とは」

繋いだままの手に少し力を入れた。

彼も握り返してくれる。

「勿論」

近い距離。

優しい目に、ギザギザしてた心が…

まあるく膨らんだ。