ドアを無理やり開ける音がした。
木の板が割れるような大きな音。

同時に現れた人影。
それは小さなものだった。

「……っ!?」

流石の彼も驚いて私の身体から手を話離す。
投げ出されるように倒れた私に、駆け寄ったのは。

「フミオ!」

私より少し小柄で色白の少年。
フミオは床にへたり込んでいる私の手を強く握った。

「怪我、してない?」
「……す、少し」

ほんの少し擦り傷が足に。
それを確認したフミオはキッと陽太君を睨みつけた。

「貴方は自分が何をしているか、分かっているんですか?」
「……そこを退いてくれ」
「退きません」

ジリジリと私達に近付いてくる。
フミオは私を後ろに隠した。

「……退けよ」
「駄目だ」

また一歩、さらに一歩。
腐りかけた床がギシリギシリと嫌な音を立てる。

「……ボクと莉子の結婚式だ」
「不可能ですよ」

フミオの言葉にふっ、と笑った。

「それは法律の話だ。愛は法律なんかに縛られない」
「独りよがりだ」
「……愛に年齢なんか関係ない」

そう呟いて取り出したのはナイフ。
以前見せてもらった事がある。
大きなサバイバルナイフだった。

「な、何をする気ですか……」
「結婚する、莉子と」

虚ろな目でナイフを翳した。
私達と彼との距離。
ほんの少し手を伸ばせば、そのナイフはフミオの胸を意図も簡単に貫けるだろう。

「……待って!!」

私は叫んだ。
泣きながら叫ぶ。

―――その時、また大きな音が教会に響いた。