「おい! 莉子? おいっ!」
「………あ」

少し眠っていたのか。
気がつけば再び涼介の部屋だった。

「突然ボーッとしちまうからびっくりしたぜ。声掛けてもなかなか反応しないしよォ」
「すまない……寝てたのかも」
「目は開けてたぞ? 大丈夫かよ、お前」
「ん、大丈夫」

心配そうに顔を覗き込むコイツ、思ったより悪いヤツじゃあなさそうだ。

「……あ」

まだ広げられていたアルバム。
小学生位の男女が三人と高校生? 位の男が一人。
一緒に仲良さそうに写っている。

「この高校生は……太郎さん?」
「ああ。正しくは中学生だけどな」
「うそっ、大きいなァ」

この頃も美形だ。今と同じく穏やかな笑みを浮かべている。

「これは涼介か」

小学生の男の子が二人、そのうちの顔の濃い方。
これがコイツか。

(ま、まぁ可愛い顔してる)

遺伝子は偉大だな。

「そしてこっちはお前のガールフレンド?」

女の子の方は白いワンピースを着ていた。
長い髪は少しくせっ毛なのかクルクルと風に靡く様が良く撮られている。

黒目の大きな目にはにかんだように笑う口元。

「ふん、なかなか可愛いカノジョじゃあないか」

お世辞でも褒めてやる。

「………」

しかし涼介は答えなかった。

「おい、涼介?」

今度はそっちが意識飛ばしてるのか、と肩を叩けば。

「あ、ああ。まぁな」

と実に曖昧で微妙な反応が返ってきた。

(なんだコイツ)

不思議に思うも、まぁ別にいいか。
と気にするのを止めた。

「……そろそろ下に戻らないと」

仲の良さそうな二人の元へ行くのは正直気が重いが。

「おい」
「?」

立ち上がるも腕を掴まれた。

「なんだよ。またなんかあるのか?」
「いや、その……まだいいんじゃねぇかな」
「は? そういう訳にはいかないだろう」

それにそろそろ帰らなきゃ行けないし。

「いや、あー、ええっとぉ……」
「なんだよ。ハッキリ言いなよなァ!」

モゴモゴと何か言うような言わないようなその態度に苛立ちが募る。

「……ほら、その邪魔しちゃ悪いじゃん?」
「はァ?」
「兄貴と富美、なんかいい感じだったしさ……」

(こ、この野郎ッ……!)