私は起き上がろうとしたが、右足を捻ってしまったのか、上手く起き上がれずにいた。

ここにきてようやく、私は自分が引っかかった何かを理解した。私のすぐ横には痛そうに右膝を抑えている玲美がいた。
足元を見ず、目の前の人物を捕まえるのに必死で玲美が近くにいることを気が付いていなかった。


「れ、玲美!大丈夫!?」


「な、何とか...ちょっと擦りむいちゃっただけだし....杏は?」


「私は多分捻っちゃった...それよりごめん....わたしのせいで作戦が...私のせいだ....何でよ...何でこんな事に....私はただ...純を助けたかっただけなのに.......」


ここまで作戦を立ててもらい、頼りがいのある指示をくれた玲美。誘導の役割を任され見事成功させてみせた勝治。そして命がかかっている私の愛する純。そんな人達の気持ちを踏みにじるようなミス、決してしてはいけないと心に誓っていたのを見事に破ってみせた。

そんな自分の無能さが招いた事態、私は自分の負の感情に押し潰されてその場で泣き崩れた。足の痛みを気にしなくなる程に、子供のように顔を涙と鼻水でグシャグシャにしながら泣き喚いた。


そんな私を玲美は抱き締めて耳元で囁く。


「何諦めてんの杏。収穫はあった、戦いはこれからだよ。」