玲美に言われ、その人物は止まって半分だけ身体を向けて、目だけで私達を見ていた。

その人物は黒くて長い布を頭から被さっており、顔は見えず目線を感じるだけだった。


だが、これだけで分かる。顔を見られたくないのはそれ相応の理由がつきもの。今回に限りは黒としか思いつかない。


その人物はそのまま止まっていたが、急に姿勢を低くして私達に突進してきた。
急であまりにも突然な事に私と玲美は反射的にそれを避けてしまい、その人物は奥へと走っていく。


「ま、待って!!!」


玲美はそう呼びかけながら走り出す。私もその声につられて走り出した。その人物とは距離はそれ程離れていない。あとほんの少しのさだった。

冷静に考えればそこから逃げ切れる訳ないし、もし逃がしても他の生徒に事情聴取すれば人物は浮かぶ。

だが、私は捕まえるという一点に集中していた為、とてつもない焦りを感じていた。


お願い!止まって!!止まってよ!!あなたが止まらないと純が....純が!!!


私はその背中を掴むように手を伸ばして走った。すると、足に何かが引っかかる。私はそれが何かを理解する前に体勢を崩し、転倒してしまった。

人物はそのまま走っていき、姿が見えなくなってしまった。