元道は私を見て泣きそうな顔になっていた。涙が出るのをグッと堪え、握り拳を作り、勝治の方へ目線を移すとゆっくり口を開けた。


「...すまん勝治....俺は...俺は杏さんが傷付くことを言っていた。昨日の事を....ズバズバと...」


元道が申し訳なさそうに言うと、勝治はバッと顔を上げて、片手で元道を殴った。元道は殴られた方向へ倒れ込み、近くにいた生徒から小さい悲鳴が聞こえる。
倒れ込む元道に勝治は歯ぎしりしながら息を荒くしていた。


「てめぇ....よりによって.......許さねぇぞ!杏がどれ程昨日傷付いたと思ってる!朝、俺と玲美は昨日の事で話をした。そん時、あいつはあいつなりに気持ち切り替えてたんだ!純の為に前へ進もうとしてたんだ!
それなのに....お前みたいなやつのせいで!!!」


勝治は元道に馬乗りし、左右の拳という凶器で元道を何発も殴った。元道から血が飛び散っているが、元道は反撃も抵抗もしなかった。
流石にヤバいと感じたのか、立飛の三人グループは勝治を止めようとするが、その三人の手を振りほどき、元道に少しでも攻撃していた。

私は涙を流しながら、あらんかぎりの力で立ち上がり、二人へ近づいて行く。


「や...やめてよぉ....元道君は悪くない...私が....私が悪いのに...」


私のか細い声は勝治の耳には届かなかった。
というより誰の耳にも届いていなかった。