喉元まで来ているその言葉は私の意識、良心という名の壁に阻まれていた。

頭の中で色んな思考が台風のように回っていく。グチャグチャの頭の中、今何をすればいいのか分からないほど掻き乱されていく。

すぐ頼られると思っていたのだろうか、元道はいつまでも黙っている私に首を傾げた。


「あ、杏さん?」


その言葉で私の頭の中の台風は無くなり、一つの答えを導き出した。その答えは喉元にあったストッパーをするっと通り抜けた。


「...ううん、なんでもないや。今の忘れて。」


「そうか?何か抱え込んでるなら」



「いいの!本当に大丈夫。必要になったらすぐにまた相談するよ。」


「そうか....分かった。じゃあここで俺は...またいつでも相談してくれよな!」



「分かったって。それじゃあまたね。」


私が小さく手を振ると、元道は満面の笑みで大きく手を振り、立ち去っていく彼は今にでもスキップしてしまいそうな印象を持った。

そんな明るい元道に対して、私は先程口走ろうとした事を思い、酷く落ち込んだ。


....元道君はいい人だ。実際、元道君の言葉に私は少なからず楽になれた。勝治や玲美とは違って普段あんまり関わっていないのに、私達を信じてくれた。
そんな恩人に私は...