「大丈夫ですか?」
男が口をきいたので僕は驚いた。それにこの顔、見た事があるような気がする。

「大丈夫?」
咲さんはもう一度僕に尋ねた。
「僕は、、大丈夫です。」
「どうしたの?慌てて。。」
「えっと、貴方は。。」
僕は男の汚れた防塵服に着いた名札を見た。
『下村』
そうだ。化学部の下村さんだ。
噂に聞いた事がある。神懸かり的な段取りと精度で、彼にしか出来ない実験や分析が様々ある、神の手と言われている化学実験室の主だ。
「下村さん、ですか?」
「はい。そうですが。」