穏やかな月日が流れてゆく。


 静流と柊は入籍後、写真館で結婚式の写真だけ写した。

 純白のドレスに身を包んだ柊は天使のように可愛くて。

 シルバーのモーニング姿の静流はまるでモデルの様だ





 2人で写した写真をリビングに飾った。

「柊とってもいい笑顔しているね」

「貴方もモデルさんのようですね」


「ねぇ柊。いつまでその敬語使う気なんだ? もう、俺達夫婦になったのに、いつまでも敬語使われるとすごく距離感あるなぁって思うんだ」

「ごめんなさい。・・・ずっと癖で・・・。でも、少しずつ使わないように・・・するから・・・」

 ぎこちない柊を、静流はそっと抱きしめた。


「君の居場所はここね、俺の腕の中だよ」

「はい・・・」


 抱きしめられている柊は、とても幸せそうな顔をしている。



 
 恋人の望んだ臓器提供の一部・心臓を受け継いでくれたのは、ずっと16年も静流を想い続けていた柊だった。


 出会う事もないと思っていた2人が、偶然通り過ぎただけで惹かれ合ってしまった。


 罪悪感を感じてずっと自分を責めていた柊。

 そうとは知らないで、どんどん柊を愛してしまった静流。


 遠回りをしてお互いが両想いだったことを知った。



 今こうして一緒にいる幸せ。

 この幸せが手に入ったのは、愛する人の命を受け継いでくれたからだろう。

 
 沢山の人が行き交う中で出会える確率は奇跡に近い。

 愛する人の心臓を受け継いでくれた人を愛する事も奇跡に近いだろう。


 命が紡がれてそして愛を紡いだ静流と柊。


 彼の愛した人は・・・恋人の命を受け継いでくれた人だった。

 そしてその人はずっと想いを抱いてくれていた人だった。



 命を紡いで愛を紡ぐ。

 2人奇跡はまだこの先もずっと続いてゆく・・・。
 
 


 END