それから静流と柊はバスに乗って帰って行った。

 バスの中で、柊はずっと零のお墓にバラの花を供えていた事を話してくれた。

 そして静流と三ヶ月でも交際がきまってから、静流の父清流のお墓にもカスミソウを備えていた事も。


 静流は感謝の気持ちでいっぱいで何も言う事はなかった。



 気持ちが通じ合えて、柊は素直に笑ってくれる。

 そしてミルに送ってしまったメールの事を話して、謝ってくれた。


 静流はそんなメールは気にしないと言って許してくれた。






 街に戻ってくる頃には、もう日が沈んで夜になっていた。

 静流は柊の家まで送っていくと言い出した。

 断ろうとした柊に

「もう、お父さんには会って来たんだ」

 と言った。


 驚く柊だったが、全てを知られたことでどこかホッとしていた。




 柊の家は街はずれのタワーマンションに住んでいた。

 高級マンションで、お金持ちしか住めないタワーマンションの最上階に住んでいる柊。



 玄関まで送ると言った静流。


 最上階に来ると景色が違う。


 鍵はカードキーで、カードをかざすと玄関が開くようになっている。


 柊がカードキーで玄関を開けようとした時。


 カチャッと玄関が開いた。


「お帰り柊」


 護が出てきた。


「お父さん、今日は早かったの? 」

「ああ、何となく早く仕事を切り上げて来たんだ。ちょうど良かった、静流君、上がって行ってくれよ」

「あ、いえまた改めて伺います。今日はもう遅いですし、久しぶりに早く帰ったなら。親子でゆっくりして下さい」

「気を使わなくていいんだよ。何となくだが、今日は君が来るような気がしたんだ。これからは、なるべく早く帰るようにして柊との時間を作るから。遠慮なく上がってくれ」


 静流は柊を見た。

 柊はそっと微笑んだ。