「なんでだろうなぁ」



気がつけば彼は、にやにやとしている。


何、この表情……?


なんとなく、嫌な予感がする。



「何が、ですか?」



眉を寄せて、わたしは聞いた。



「なんで反対にしたんだろうなぁ」



「あ、あはは……。なんででしょうねぇ、わたしとしたことが……」



「分かった!」



突然彼は、手をぽんと叩いた。



「は?」



この声を出してから、わたしはすぐに後悔した。


「は?」は、流石に失礼すぎる! どうしよう!


すみません、とわたしが言おうとした時、彼は言った。



「俺に話しかけてもらいたくて、そうしたんだろ? バレバレだよ」



「はい?」



いや、訳が分からないんですけど。
わたしは、ただうっかり間違えただけなんだし、そもそも君のことを何も知らないから、話しかけてもらいたいという気持ちはなかったんですけど。



「まぁ幸いなことに、俺らは同じ学年のようだ。良かったな」



わたしが混乱している間に、彼は学校を出てしまった。