最後の方を言い終える前に、浅黄さんはこちらを向いた。
「……特にない」
「そうですか」
「ここには殆ど寝に帰ってるだけだから。足の踏み場がないくらいに汚くしなければそれで」
おお、と勘の鈍いわたしでもピーンときた。
あんまり帰らない、寝に帰ってくるだけ、きっと彼女がいるはず。
「冷蔵庫は腐ったものを放置しなければ好きに使ってどーぞ」
「浅黄さんの……」
彼女さんってどんな方なんですか、と喉元まで出かかる。
野次馬根性が芽生えたけれど、それは必至に抑える。尋ねたって惚けられるだけだろう。
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