わたしはその紙を直視できず、ぼんやりと地面のタイルの色を見た。
「ペンないのかよ、本当に社会人か」
そう言って、浅黄さんが内ポケットから高そうなボールペンを出した。
それを受け取るのを考えていると、押し付けられる。浅黄さんは膝の上に頬杖をついて目を閉じた。
「書いたら起こして」
「……今書かなきゃダメですか?」
「俺を永眠させる気か」
「私が起こすまでずっと寝てる気ですか?」
こちらを見た。
疲れているのだろう、やっぱり。
忙しい合間を縫ってここに来てくれた。
わたしはそれに値するのか?
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