生簀の恋は青い空を知っているか。


少し得意げに笑う。そんな、人を召喚獣みたいに。

菊池さんもそれを知っていそうだけれど。

浅黄さんはスーツのポケットからガサガサと紙を取り出して広げた。
折り紙でも始めるのかとそれをじっと見た、けれど違った。

「……え」
「君のところ埋めてくれ」

婚姻届と書かれたそれを渡された。

きっちり隣の欄は埋められてる。浅黄さんの書く字を想像したことは無かったけれど、驚くほど達筆だった。

「硬筆、習ってました?」
「習ってたな。習字とお茶と花と剣道」
「全ての道を通ってる……」
「どこの道だよ」

ボケのつもりらしい。