窓の外を見ながら、住所をメモする余裕すらなかったことを思い出す。

「珍しく、大人しい方ですね」

菊池さんが言った言葉は浅黄さんに向いていた。わたしはちらを浅黄さんの方を見る。

「うるさい」
「あれ、浅黄さん起きてたんですか」
「前見て運転しろ」
「はいはーい」

二人の会話から信頼関係が見て取れる。休日の朝だからか、道を歩く人の姿はあまりない。
わたしは再度窓の外へと目を向ける。

駅の近くまで来た。よく知る新幹線も通る主要駅のひとつだった。
ここが最寄駅って……。

「浅黄さん、さっきの話なんですけど」