愛想笑いに疲れて庭に出る。日本庭園の広がる先に、池があった。

惹かれるようにして、それに近づく。

やはり、その中には鯉がいた。紅白、黒写り、丹頂、松葉。
煙草を咥えながら種類を目で追う。

丁度良いところにベンチがあって、向かう。途端、心臓が止まりそうになる。
人間がいた。

「……あ、どうも」

こちらを見上げて、その挨拶。暗くて見えないからかと思っていたけれど、この様子は多分酔っているらしい。

「大丈夫か」
「ええ、まあ」

ベンチの端に座る女はドレス姿で、どこかで見たような見なかったような。