「君がいたから」

簡潔にそう返ってきた。

「御堂ホテルの創業何年かのパーティーだった。行く予定の無かった俺は友人に呼び出されて不機嫌だった。外で煙草吸おうと思ったら、君がいた」

煙草吸っていたんだ。ああ、だからあのとき。

「何話したんですか?」
「教えない」
「ええ……」
「別に思い出さなくても良いんじゃないか?」

そう言われると更に気になる。
手を引っ張られながら庭の方に顔を向ける。綺麗な庭だ。

さっきお祖母さんに言われた言葉を思い出す。

「鯉は滝は上れないらしいです」

浅黄さんが急に立ち止まるので、ぶつかりそうになる。