出たすぐの道路に車が停まっていた。浅黄さんが迷わずそれに近づく。

「駅まで送ってく。家までは時間がない」
「あ、ありがとうございます」

ここがどこなのかもよく分かっていなかったので、正直タクシーを呼ぶのも困難だと思っていた。
駅まで行ってくれるだけで十分だ。

「おはようございます。菊池と申します」

後部座席に乗った浅黄さんに続けば、運転席に座っていたスーツ姿の人がミラー越しに挨拶をしてくれた

「おはようございます、お邪魔します」

菊池さんという名前だけ覚えた。浅黄さんの部下なのか、運転手なのか。
わたしも自己紹介をすべきか考えたけれど、その前に車が発進した。