生簀の恋は青い空を知っているか。


すごい暗い場所だった。
でも寒い場所ではなかったな、と思う。

「お母さん、夢の中でお兄ちゃんを見たの」

自分の腕に刺された点滴の針。母が眉間に皺を寄せた。

「一緒に連れて来られなかった……」

背中に手が届かなかった。もう少しだったのに。
話しかけることすら出来なくて。

肩を抱き寄せられて、嗚咽が漏れる。

「あなたが起きてくれて、本当に良かった」

遂に泣いてしまった母を見て、わたしも泣いた。
嬉しいはずなのに、寂しい。

兄はもう少しあそこに留まるのだろう。

背中を抱きしめ返して、兄を思った。