浅黄さんはきっと分かっている。鼎と理美のこと。お兄ちゃんのこと。
「わたしの為の嘘です」
わたしが言いたくなくて、理美の顔を見るのが怖くて、言えなかった。
「そうか。ならやっぱり、君が悪い」
そう言いながら、浅黄さんは抱きしめてくれた。
どっちが欲しかったんだろう、とその体温を感じながら考えていた。
浅黄さんに、わたしが悪いと言って欲しかったのか、それともこうして抱きしめて欲しかったのか。
将又、どちらもか。
薄いコートが脱がされる。そういえば濡れていたんだった、と思い出してその腕から抜け出そうとした。



