母は兄を隠したがった。 父は何も言わない。 わたしはお兄ちゃんを救いたかったんじゃない。お兄ちゃんに救われたかった。お兄ちゃんに救われることによって、わたしは雁字搦めになった心身を自由にすることができると思っていた。 現実は違った。 きっとお兄ちゃんはもう目覚めない。わたしが救われることはなかった。 なかった、はずだった。 「浅黄さんは、本当にわたしを救ってくれましたね」 「あ?」 「誰だって良くなかったです」 雨だけがわたしの味方だった。 分厚い雨雲を晴らしたのは貴方だった。