は、と肩を揺らしながら浅黄さんが笑った。

「それ以外に答え方あんだろ。本当にアホか」
「今のは馬鹿にしてますね?」
「じゃあ行くか」

車のエンジンがかかる。

「誤魔化しましたね?」
「早くシートベルトしめろよ」
「あ、はい」

手を肩の方へやってベルトを引っ張る。
その手に触れられて、浅黄さんの方を見た。

目が合う。

「どうしたんですか」
「聞いてない」
「え、何を」
「君の返答。わたしも、以外」

改めて聞かれると答え辛い。逃げるはずもないのに掴まえられている。

「貴方が、好きです」

同時に浅黄さんの左手が目が入った。
薬指。
薬指に、何もない。