兄がオーストラリアへ行ったから、わたしがお見合いに出されるようになった。
しかも柴舟は事業が傾いて、大きな借金を背負っていた。

それを知りながらも、その借金をぽんと出してまで、わたしと結婚してくれた。

浅黄さんがオーストラリアのどこを探しても、理美がどんなにメールを送っても、兄の秋水が目覚めることはない。殆どその可能性は低いと担当医から言われているから。

母もそれを知っている。わたしたちはそのこと全てを容認しながらも、ここまで体裁を取り繕ってきたのだ。

「それなら良いのよ」

そう言って、母はリビングの方へ去っていく。