生簀の恋は青い空を知っているか。


やはり何でも知っているらしい。浅黄さんは続ける。

「妹想いの兄だったんだろ」

その言葉が、心の奥にしまいこんだ何かを揺らす。

手を引いて、離した。

「もう、この話は、したくありません」

酷く昔が懐かしかった。鼎と理美と二人で、あの部室で、わたしの持っていった映画をわいわいしながら見るのが懐かしい。

懐かしい、じゃなくて、戻りたい。
ただそうして、未来のことは後で考えれば良くて、今が楽しければそれで良くて。

そんな頃に戻りたい。

浅黄さんみたいに、暴いてくるような人もいないときに。
暴かれるようなことがないときに。