背中が怒っている。わたしは振り返って、五色くんに空いている手を振った。
「五色くん、また会社で」
当人はきょとんとした顔で、それから無理に作った笑顔を見せた。
……なんて日になってしまったんだ。
同僚と飲みに行った帰りに結婚相手に会うなんて。
「浅黄さん、あの」
「あ?」
「なんでここにいたんですか」
怒った背中がぐるんと振り向いた。その顔はもう怒ってはいなくて、「あ」と声が漏れる。
「……忘れた。そんでタクシー降りたら君らがいた」
「うちの会社潰すの?」
「潰されてえの?」
呆れた顔をしている。手を繋いだまま歩いているけれど、どこへ向かっているのか。



