ふーん、と聞いたわりにどうでも良い風で、浅黄さんはスラックスのポケットに手を入れたまま「帰るぞ」と言う。
「余裕ですね」
その背中を追おうとして一歩踏み出すと、後ろから五色くんの声がした。
浅黄さんの視線がわたしの後ろへと向く。
「取られる心配はなしですか」
「君、誰?」
「後輩の五色といいます」
「五色周作クン」
突然の営業スマイルで浅黄さんは五色くんを呼んだ。
フルネームで。
五色くんは勿論、わたしも少しだけ背中が震えた。
「チョーシ乗ってっと会社潰すからな」
手を引っ張られて、浅黄さんとともに歩き出す。



