唇を可愛く尖らせて、鼎は「そういえば松葉ちゃん」と切り出す。

「最中社長の息子とお見合いしたんですって?」

噂がまわるのが早すぎる。いやこれは、鼎に特化したことでもある。
彼女は昔からどこからか情報を仕入れてくる。色んな教室に盗聴器を仕掛けているのではと囁かれていた時期もある。本人も否定しないから、そこはグレーのまま。

「最中社長と知り合い?」
「うちの母の同級生。ちなみに息子は姉と同い年」
「世間の狭さにわたしは震えてしまいそう」
「あら、最近暑くなったところだけれど」

冷房が効きすぎてる? と鼎が業務用エアコンを見ながら言う。